「どうして私が?」
「私の友人というコトで、私と一緒に出席して頂きたい。パーティーの間、私の傍で話し相手になって頂けると、嬉しい」
「そっ」
そんな理由で?
耳を疑う。
だってそうだ。ひどくバカバカしい。そうは思わないだろうか?
知らぬ人間の中で一人孤独に浮いてしまうのが嫌だ。たかだかそのような理由で高校二年の小娘に同行を請うなど、成人男性として恥かしくないのだろうか?
彼には失礼だと思いながらも、心の内でそう呟き、だが――――
バカよねぇ〜
あの子、田代さんと澤村くんが付き合ってるの、知らなかったんだってさっ
集団の中で一人取り残されるのは、確かに辛い。
「で、でも私、そのパーティーには何の関係もないし……」
「その点を言うなら、私だって同じですよ。何の関係もない私が参加できるくらいだ。きっと親しい者だけの個人的な集まりなのかもしれない」
そう言って、少し身を乗り出す。
「ひどく子供じみた理由と、お笑いかもしれない」
「そっ そんなコトはっ」
慌てて否定する。
そんな美鶴の態度に、慎二は柔らかく笑った。
「構いませんよ。自分でも情けないとは思うのです」
ふと、南に広がる庭へ目を移す。
「情けないですね」
キラキラと輝く朝日を浴びながら漂わせる憂いは、そこはかとなく華やかだ。
そう この人には、華がある。
だが、華々しい場所は似合わない。
そう思う。
不可解な助力も、今回の誘いも………
霞流慎二という人間そのものが、いまだにほとんど揣摩できないままだが――――
誰にでも、苦手なモノはある。
彼の申し出はひどく幼稚でバカバカしい。付き合う義理も必要もない。そうは思っているのに
「いいですよ」
気付いた時には、そう答えていた。
美鶴の言葉に、慎二は少し目を大きくして首を動かした。
少し上がった目尻に浮かぶ驚きが、なんとなく美鶴に気恥ずかしさを持たせる。
そんなに驚かないで欲しい。自分でも驚きなのだから。
「べっ 別に、何か予定があるワケじゃないし」
視線を落して言葉を続ける。
「でも私、パーティなんてモノに出たことないから……」
「大丈夫ですよ」
口元を緩めて、目を細める。
「衣装も宿泊施設も、こちらで用意しますから」
まぁ どうせ彼らにとっては大した出費でもないんだろうな。
以前の手厚過ぎるほどの援助を思い返し、妙に納得してしまう。
…………?
「えっとっ」
今度は美鶴が目を見開く番。
「シュクハクシセツ?」
「えぇ」
慎二はスプーンを手にとり、デザートを掬い上げる。
「日帰りできるでしょうが、せっかく行くのに、とんぼ返りではもったいない。予定がないのなら泊まった方がいい」
母には、友人を連れて行くと伝えておきますよ と、嬉しそうに顔を綻ばせる慎二。その笑顔に、まぁいいかっ とすら思えてしまう。
なぜだか気を緩すと崩れてしまいそうな頬。隠すべくデザートを頬張った美鶴には、気怠るそうに口元を緩めた慎二の表情など、全く見えてはいなかった。
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